映画にもなった、沈没した豪華客船「タイタニック号」。
今もなお沈んだままとなっており、アメリカでは潜水艦による見学ツアーも高額で販売されています。
海で発生した沈没事故では、通常は引き上げ(サルベージ)が行われるものですが、タイタニック号については事故から110年が経った現在も引き上げが行われていません。
少しずつ海中で損傷が進み、もうすぐ消滅してしまうのではないかという説も存在するようです。
今回は、今もなお海中に取り残されているタイタニック号について、
引き上げされない理由は何なのか
現在はどのような形になっているのか
沈んだまま=消滅危機
という気になる情報をまとめてお届けしていきます。
タイタニック号が引き上げされない理由はなぜ?
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1912年、北大西洋を航海中に氷山で船体を損傷したことで沈没した豪華客船・タイタニック号。
乗組員2200人のうち1500名もの犠牲者を出し、長い歴史上でも最悪の海難事故と呼ばれています。
海底へと姿を消したタイタニック号は、事故からおよそ70年後の1985年にその姿が再び発見されました。
回収可能なサイズの遺留品などはこれまで約5000点以上が引き上げられてきましたが、船体そのものは現在も海に残された状態です。
サルベージを行なって船体を検証すれば、事故の詳しい状況や真相なども見つかりそうですが、なぜ今もそのままになっているのでしょうか?
ここでは、タイタニック号の引き上げ作業ができない4つの理由を紹介させていただきます。
水中文化遺産に指定されている
タイタニックごうは、2012年に水中文化遺産に指定されました。
1912年に起きた英豪華客船タイタニック号の沈没事故から4月中旬で100年となるのを前に、ユネスコは5日、大西洋の海底約4千メートルに眠るタイタニック号の残骸について、海底の遺跡などを守る水中文化遺産の保護に関する条約の対象とすると発表した。
引用:日本経済新聞
現在タイタニック号の残骸は保護対象にあるということです。
今後も残骸の略奪や破壊、売却などは行われない方針であると見られています。
バクテリアなどによる腐敗や損傷
事故から110年が経ったタイタニック号は、現在腐敗や損傷がかなり進んでいる状態です。
タイタニック号の中の生態系にはハロモナス・ティタニカエという新種のバクテリアも発見されています。
引用:titanic wiki
このバクテリアが船の外壁素材である鉄を酸化させて錆を生み、船体の劣化を進めているようです。
船が損傷がひどい状態では、引き上げている最中に船がバラバラになってしまう可能性が高いと見られています。
現代の技術では不可能
深い水深にある巨大な船体を引き上げるのは、現代の技術では不可能とも言われています。
タイタニック号が沈んでいる深さは富士山の標高とほぼ同じです。
大きな鉄の塊を3600mの深さから引き上げることは現実的ではなく、引き上げられたとしても腐敗や損傷により引き上げの途中でボロボロに崩れてしまい、海上に残るのはバラバラになった一部のパーツのみということになるでしょう。
それであれば、文化遺産にして損傷しながらも船の形を保っている状態を残す方が良いというのは正常な判断と言えますね。
環境や生態系への配慮
タイタニック号は、110年も沈んでいたことにより、戦隊は人工漁礁となり多くの海洋生物たちの住みかになっています。
タイタニック号に限らず、沈没船には特殊な生物や、その場所にしかいないような微生物が住んでいることも多く、沈没船がコアとなり小さな生態系を作り出している状態とも言えます。
そんな状態で無理に船体を引き揚げてしまうと、築かれた生態系を破壊してしまう恐れがあるということですね。
【画像】タイタニック号は現在どうなっている?
2023年6月に潜水艦が行方不明となり、5名の乗組員が亡くなったことで大きな話題となった深海探査会社OceanGate社は、2021年と2022年にタイタニック号への遠征を成功させています。
オーシャンゲート社の遠征チームによる、現在のタイタニック号の状態についての報告がこちら。
- タイタニック号はさらに崩壊が進んでいる
- 特に劣化が進んでいるのは船首のほう
- より壊れやすいマストは完全に甲板上に倒壊し、どんどん見分けがつかない状態になっていっている
- 一歩一歩、すべてが崩れていっている
現在、タイタニック号の周囲には、ビールやソーダの瓶、引き揚げ作業に使用した重りや鎖、網などのごみが散乱している状態なんだとか。
2001年には、タイタニック号の船首に潜水艇を停泊させ、その中で1組のカップルが結婚式を挙げたことが大きな話題となりましたが、そうしたツアーなどの訪問者が残したプレートや記念品もたくさんあるとのこと。
イギリスとアメリカは、2020年に現場に立ち入る人、遺物を持ち出す人へのライセンス供与と拒否を共同で行うことに合意しました。
いつ崩壊、消滅してもおかしくはないタイタニック号ですが、1日でも長くその姿を保てるように、ツアー含め関わり方を今一度見直す必要がありそうですね。