中国の税関は、日本の水産物の輸入を全面禁止すると発表しました。
この報道に、
なぜこのタイミングで輸入禁止なのか?
輸入禁止になると日本にどんな影響があるのか?
など、疑問を持った方も多いかと思います。
今回は、中国による日本の水産物輸入禁止についての疑問を簡単に分かりやすく解説していきます。
中国が日本の水産物輸入禁止を発表
引用:日テレNEWS
2023年8月24日、中国税関総署は日本産の水産物輸入を同日から全面的に停止すると発表しました。
これまでは福島や東京など10都県の水産物が禁輸対象でしたが、それを全国に拡大した形です。
中国税関総署は今回「中国の消費者保護や輸入食品の安全確保のために全面禁輸に踏み切った」と説明しています。
他国の日本産食品輸入規制一覧
日本産の食品に輸入規制をかけているのは中国だけではありません。
2023年7月時点での輸入規制一覧をまとめたものがこちら。
引用:時事エクイティ
他国も規制をかけてはいますが、EUは今後撤廃の動きを見せています。
中国は他国と比べても厳しい規制をかけていますが、なぜなのでしょうか?
【なぜ】中国が日本の水産物輸入禁止の理由は?
中国による日本の水産物輸入禁止の理由は、処理水放出計画にあります。
日本政府は、2021年4月に東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を2年程度の準備期間を経て海洋放出する方針を決定しました。
この発表を受け、各国が日本の水産物の輸入規制を発表。
そして、2023年8月24日に処理水の海洋放出が始まりました。
中国は当初、新潟県産のコメを除く10都県の食品輸入禁止をかけていましたが、実際に海洋放出が始まったタイミングで
中国の消費者の健康を守り、食品の安全を確保するため
として、日本の水産物の輸入禁止をかけました。
各国に比べると厳しすぎるようにも見える中国の規制。
これについては、現段階で2つの理由が考えられます。
理由①細かい検査に時間がかかる
中国は、日本の水産物について「人民の健康と海洋環境に責任がある」と主張しています。
もともと中国では日本からの輸入水産物の一部を抜き取って調べる“サンプル検査”を行っていたが、2023年7月からさらに詳細な検査の“100%検査”に切り替える考えを示しています。
“100%検査”には時間がかかるので、日持ちしない水産物は鮮度を保つことができず、事実上の輸入禁止措置になっているということです。
理由②各国へのアピール
中国の習近平首席は、現在環境問題についてのアピールを盛んに行なっています。
2023年7月18日には中国で『全国生態環境保護大会』を開き、そこは「原発も安全にする」という内容を入れ込んでいました。
全国生態環境保護大会で重要演説を行う習近平氏。(北京=新華社記者/饒愛民)
このタイミングで日本の処理水の問題が出てきたため、これを好機として『海を汚染する日本、環境を大切にする中国』という対比をアピールしようとしていると見られています。
いま中国は、特別行政区の香港も従えて同じような輸入規制措置を取らせ、東南アジアやアジア太平洋の国、南米、台湾など共闘しよう水面下の動きを見せているともされています。
メディア関連では特別取材班を組み、日本の原発処理水の海洋放出について、
- 中国の国営テレビ・CCTVは、原発処理水を「核汚染水」と呼び報道
- 韓国やフィリピンでの日本に対するデモの様子を取材
- 太平洋を挟んだ南米(ペルー)でも問題になっていると報じる
- 「核汚染水」が日本製の化粧品に入り込む可能性があると報じる
など、批判的な報道を積極的に行なっています。
今後は日本からの食品を全て輸入禁止にして、さらに他国へ呼び掛けを広げていく動きもあるかもしれません。
理由③日本への圧力
中国は、建前では処理水の海洋放出を理由としていますが、実際のところは日本への圧力が目的であるとも考えられます。
なぜならば、
- 処理水の海洋放出が理由なのに関係のない地域の水産物の輸入も規制していること
- 中国では福島原発の何倍ものトリチウムを自国の原発から放出している
- 中国人の密漁は日本領海で現在も続いている
という事実があります。
引用:讀賣新聞オンライン
日本の汚染水(中国ではこのような表現で報道されています)から中国を守る、という主張は建前でしかないと分かります。
実際は日本へ圧力をかけたいだけのように見えますね。
ただ、これまで中国は日本産の食品を「安心・安全なもの」として大量に輸入しており、中国国内でも日本産の食品は人気が高いものとされていました。
そのため、日本産の食品を大々的に規制することは中国にもマイナスが出てくることと言えます。
中国政府がどこを落とし所にするのかが焦点となりますね。
【どうなる】中国が水産物輸入禁止で日本への影響は?
中国が日本の水産物に輸入禁止をかけたことで、日本にはどのような影響が出るのでしょうか?
中国は日本にとって最大の輸出国で、2022年の水産物の輸出額は871億円にものぼります。
日本の輸出業者にとっては大打撃になることが懸念されています。
ただ、末端の消費者にとってはプラスの面もあります。
日本産水産物の輸入全面禁輸になることで、日本の魚の価格が大きく下がることが考えられます。
輸出業者にとっては痛手になりますが、消費者にとっては国内の魚を安く食べられるチャンスになるかもしれません。